あやかし神社へようお参りです。②



 「怪我の具合はどう?」

 「あ、もう大丈夫です。そこまでひどくなかったみたいで」


 良かった、と目じりを下げた女性に、自然と私も笑みが浮かぶ。

 確か賀茂くんはこの人のことを「おおおばさま」と呼んでいた。ということは、この人は賀茂くんの曾祖母に当たる方なんだ。


 「さっきは、忠敬のことを庇ってくれてありがとう」

 「いや、そんな」


 ほとんど勢いで言ったので、お礼を言われると少し居心地が悪かった。


 「忠敬は、随分と苦労をしている子なの。誰からも褒めてもらえずに育って、感情を見せなくなってしまって。だから、あの子のあんなに嬉しそうな顔を見れて本当に嬉しいの」


 そんなに嬉しそうな顔してたかな、と脳内の記憶に問い合わせてみるも、どの賀茂くんも等しく無表情だった。ひいおばあちゃんだから分かるところがあるのだろうか。

 私の気まずさを感じ取ったのか、おばあさんは壁の絵を指さして「私が描いたのよ」と微笑む。


 「全部、おばあさんが?」

 「ええ、昔からそれだけが楽しみだったの」