別の部屋に連れてこられた。すでに用意されていた救急箱のそばにあるソファーに座らせられる。
「……お前、ほんと何なの」
しばらくして、救急箱を弄る賀茂くんがぼそっとそう呟いた。
え? と思わず聞き返すと、少し顔を顰めた賀茂くんが口を開く。
「俺に腹が立っているんだろ。なのに、なんであんなこと」
先ほどの事を言っているのだと察しがついた。
私自身もあの時はその場の勢いで行ってしまったところがあるので、何故と問われると答えるのがすこし難しかった。
「確かに腹は立っているけど、それとこれとは別かなって……。だって、賀茂くんを凄いと思っているのは本当────だと思うし」
それとこれとは別と言ったが、割り切れるほど時間は立っていなかったらしい。結局語尾がうやむやになってしまった。
賀茂くんは淡々と手を動かした。強く打った頭は少しだけ血が滲んでいた程度で、後はかすり傷だった。

