どうやら気を失い怪我をした私を手当てするためにここまで連れてきたらしい。というかそもそも、怪我の原因は賀茂くんだけれど。
そのことを思い出して、思わず拳に力が入った。
「ねえ、どうして何もしていない妖を祓おうとしたの。あの子は人を襲うような妖じゃない」
じろりと睨みつけられて、言葉に詰まった。賀茂くんは私に背を向けると、面倒くさそうに息を吐く。
「妖に善良などない。人に害をなす存在、それ以上も以下もない」
「人を襲わない妖だっている! 私たちと同じように、誰かを大切に思ったり心配したりする妖だっているんだよ」
「これ以上話しても無駄だ」
「無駄って何! ……分からず屋ッ」
賀茂くんが鋭い睨みを効かせて勢いよく振り返った。一瞬怯んでしまったが、逃げることなくその目を見つめ返す。
その時、部屋のドアがゆっくりと開き、壮年の男性が入ってきた。目元や雰囲気が賀茂くんによく似ていた。先ほどの女性が言っていた、賀茂くんのお父さんなのだろう。

