しばらく歩き続けた彼は、町の外れにある大きな一軒家の前で歩みを止めた。
この町には珍しい洋風な外装で、アプローチには季節の花が揺れている。テレビで見るような外国のお金持ちのお屋敷みたいだった。
そしてどこからか桃の香りが漂っていた。
「歩けるか」
そう尋ねられ一つ頷く。
私を背中から降ろすと、賀茂くんは迷うことなくそこに足を踏み入れる。振り返ることなくすたすた歩いていく賀茂くんに、その場に取り残された私は「どうしよう」と思わず慌てる。
玄関扉に手をかけた賀茂くんが振り返った。
「何してる。早く来い」
そう言われて恐る恐る足を踏み入れた。

