体の中で、何か温かいものが膨らんだような気がした。倒れた木の幹に添える手がわずかに温かい。もしかして上手くいったんじゃ、と期待が膨らむ。
しかし折れたその部分は何の変化も見せず、同じ姿のままだった。
「……駄目だったみたい」
「そりゃ、昨日今日操れるもんじゃないんだから当たり前だろ」
ズバリそう言われてしまいがっくりと肩を落とす。
やっぱり練習しなきゃダメか。
ひとつ大きなため息を吐いたその瞬間、静電気が走ったように全身の肌にぴりっとした感覚が走った。驚いて首をあげると、葵も何かを感じ取ったらしい、険しい顔で遠くを睨んでいる。
「また術者だ。アイツが何かしたんだ。仲間が泣いている」
そう言った葵が駆け出す。
「待って葵!」
慌ててその背を追いかけた。

