あやかし神社へようお参りです。②



 「め、めちゃくちゃ危ないじゃん!」

 「だから動くなって言っただろ? それに実際麻には何の危害も与えてないぞ。すごいだろ」


 不機嫌そうに葵は足元の小石を蹴飛ばした。


 「確かにすごいけど……折れた木はもとに戻らないんだよ」


 頭の隅にケヤキの兄弟たちの顔が蘇る。葵もやり過ぎたと思ったらしく眉を下げて肩を落とした。

 どうしたものか、と倒れた木の傍でしゃがみ込んで考える。


 「……あ」

 「あ?」


 不思議そうに葵が私を見た。

 倒れた木と私の手を交互に見つめる。できるかな、と手を握った。


 三門さんの祝詞を唱えるときの声を思い出した。優しく、穏やかで、包み込むような温かい声。言祝ぎが強い言霊の力だ。

 折れた部分の幹に手を当てて、鼓動を落ち着かせるようにすっと息を吸った。



 「────いたいのいたいの、飛んでいけ」