「め、めちゃくちゃ危ないじゃん!」
「だから動くなって言っただろ? それに実際麻には何の危害も与えてないぞ。すごいだろ」
不機嫌そうに葵は足元の小石を蹴飛ばした。
「確かにすごいけど……折れた木はもとに戻らないんだよ」
頭の隅にケヤキの兄弟たちの顔が蘇る。葵もやり過ぎたと思ったらしく眉を下げて肩を落とした。
どうしたものか、と倒れた木の傍でしゃがみ込んで考える。
「……あ」
「あ?」
不思議そうに葵が私を見た。
倒れた木と私の手を交互に見つめる。できるかな、と手を握った。
三門さんの祝詞を唱えるときの声を思い出した。優しく、穏やかで、包み込むような温かい声。言祝ぎが強い言霊の力だ。
折れた部分の幹に手を当てて、鼓動を落ち着かせるようにすっと息を吸った。
「────いたいのいたいの、飛んでいけ」

