昼過ぎまで三門さんと一緒に社務所で練習に励み、午後からは仕事があるらしく私は外に出かけた。あまり人の来ない、丁度いい練習場所はないかとうろうろしていると川の近くで葵に会った。
ほとんど強制的に河原へ引っ張られ、そこで世間話をしながら練習に励む。三門さんに教えてもらった半紙を投げて言霊の力で裂く練習方法を試してみたが、半紙は一ミリも避けることなく地べたに落ちる。
葵が「なにやってんだよ」とケラケラ笑ったので、むうっと唇を尖らせた。
「言霊の練習だよ。難しいんだから」
「何だ、妖術の類いか」
妖術? と聞き返す。妖が使うことのできる不思議な力をそう言うのだと教えてくれた。なんでも、普通の妖では使うことができず、一部の特別な妖だけが扱うことができるのだとか。
「生まれつき妖術が使えるかどうかが決まっているんだよ。天狗や妖狐、鬼なんかの力の強い妖は大体使えるぞ」
葵はふふんと胸を張った。
「私の妖術を見たいか? 仕方がないなあ、少しだけだぞ! 疲れるけど、麻の頼みなら仕方ない!」

