「不安にならなくてもいいよ。力の使い方を練習し始めよう」
三門さんは私を安心させるように柔らかい声でそう言う。お願いします、と不安げに頭を下げると、三門さんは「よし」と手を打った。
「丁度暇な時間帯だし、せっかくだから今から始めようか」
三門さんは書いていた御札を箱に仕舞うと、新しい半紙を広げて筆を持った。達筆な字で、半紙の左右に「言祝ぎ」「呪」と書く。少し身を乗り出してそれを見る。
「このふたつの説明は覚えてるかな?」
「……はい。私たちの持っている“言霊の力”を構成するふたつの要素、ですよね」
「その通り。呪が『陰』すなわちマイナス、言祝ぎが『陽』すなわちプラスの要素だ。例えば、祝福したり、感謝を伝える祝詞に言霊の力を乗せるとき、言祝ぎの要素を強めることで祝詞本来の力が発揮される。逆に『呪』の力が強ければ、祝詞の力は災いに転じることもあるんだ。
そして残念なことに、このふたつの要素を明確に分けて使いこなすのはとても難しい。けれど、比較的簡単に強めたり弱めたりする方法がひとつだけある」

