こんな時世では珍しいほどに少女の心は美しかった。哀れな夜に光を射す月のように澄んでいた。息苦しい世の中で、少女の傍は心地よかった。 「同じ哀れな生き物でも……あれはどこか違う」 「果たしてそれはどうであろうかな」 野寺坊の含んだ物言いに以津真天は眉間に皺を寄せた。口を開いた時には、野寺坊の姿はなかった。