「なぜここが?」
「以津真天が同じ木にとまるのは、他の連中からすると物珍しいようで」
野寺坊は淡々とそう言う。妖の便りは風より早い。
「どういった心変わりであられるか」
深くかぶった笠に隠れた興味深げな瞳が、以津真天をじっと見上げる。その目から逃れるように顔を背ければ、珍しく野寺坊が小さな笑い声をあげた。それが気に入らなくて一層口を固く閉ざす。
少女のことを未だにどうでもいいと思っていると言えば嘘になる。以津真天の中では少なからず何かしら思うところがあった。けれど今までに経験したことのないその感情をどう言い表せばよいのかが分からなかった。
昼間の少女は空虚な夜とは正反対な存在だった。少女の声を聞けば夜の虚しさは増して、広がる虚しさは少女によってかき消された。

