「貴方みたいな鳥、初めて見た。七色に光る羽なんて聞いたことがないもの。なんていう種類なのかしらね?」
少女はたまに顔をあげて微笑みかけては、またスケッチブックに視線を落とす。何度もそれを繰り返していた。
その鳥は、鳥でいて鳥でない。正しくは怪鳥という。何百年と生き、人に恐れられ、昼に眠り夜を生きるいきもの、名を以津真天といった。一部を除き、妖は人の目に触れることはない。この少女はその一部に入るようだった。現に、少女の傍に近寄ってきた狐には三本の尾があった。
「あれ、あなたは妖なのね。私に触れせてくれるの?」
スケッチブックを傍らに置き、妖狐を抱き上げた少女は嬉しそうに頬を緩める。少女は妖を恐れなかった。
妖狐は少女の左手に鼻を寄せた。塗り薬のきつい匂いに気が付いたらしい。
「ごめんなさいね、臭う? 私、工場で怪我をしてしまったの。機械に指が少しだけ巻き込まれてしまって。それで、先生が憲兵さんに頼んでくださって、怪我が癒えるまでは親戚のいるこの街で養生してもいいんですって」

