「────うわあ、綺麗な鳥!」
山の中腹、一際大きなくぬぎの木の下で少女は声を弾ませた。黒髪をきつくおさげに結って、薄汚れたセーラー服にもんぺを身に着けた十五、六くらいのうら若い乙女だ。
幹に近い太い枝にとまっていたその鳥は、少女の声に閉じていた目を少しだけ開ける。熱いまなざしが向けられているのに気が付き、しまっていた翼を広げはためかせた。黒い羽は光が当たると七色に輝いた。垂り尾が風によって羽衣のように柔らかく揺れる。
少女はハッと息を飲み、そして慌てて両手を振った。
「ああっ、待って、待って頂戴! そこにいて、お願い!」
煩わし気に少女を一瞥したその鳥は、翼をしまって身じろぎをすると、身を縮めてまた目を閉じる。少女が輝く目を己に向けてくるのが分かった。
「ありがとう、鳥さん! うんと素敵に描くから」
少女は嬉しそうな声で礼を言うと、手に持っていた風呂敷を広げて中からスケッチブックと鉛筆を取り出す。そしてその場に座り込んで、黙々と手を動かし始めた。

