社頭へ出ると、結守神社の社紋が描かれた赤提灯には灯がともっていた。本殿から鳥居へと続く階段の前までたくさんの出店が並び、いつもと変わらない賑わいをみせる。すっかり日常が戻ってきたようだ。
「こんばんは巫女さま!」
「良い夜ですね」
「こんばんは」
外に出た途端たくさんの妖たちが私に声をかけてくれる。笑顔でそれに答え、時折足を止めて世間話に加わっていると、見覚えのある後姿を本殿の前に見つける。妖たちに断りを入れて話の輪から抜け出すと、その背中に声をかけた。
「お爺さん、こんばんは」
「巫女さま。今夜は良い月夜で」
かげぬいは姿勢を正して頭を下げた。私も小さく頭を下げて微笑む。
「丁度、今ユマツヅミさまへ軟膏の御礼を申し上げた所でした。三門さまにもご挨拶をしたいのですが、今はどちらに……?」
そう尋ねられ、きょろきょろと辺りを見回す。いつもこの時間帯に予定が入っていない時は、社頭にでて妖たちと交流している。
三門さんの姿は見当たらないので、きっと御祈祷かお祓いの予約が入っているのだろう。
「一時間くらいしたら社頭に出てくると思うんですけれど」
「ああ、そうでしたか」
空を見上げて月の位置を確認したかげぬい。
「あの、良かったら社務所で休んでいってください。休憩所みたいな感じになってて、みんな自由に過ごしているんで」
そんな提案にかげぬいは目を瞬かせた。そして「では、お言葉に甘えて」と目を弓なりに細め。私もなんだか嬉しくなって、先導して社務所へ向かった。

