いつも通り、俺ァ屏風の中で眠ってたんだぜ。そうしたら突然後ろから押される感覚がして、屏風が倒れたんだ。気が付いた時にはあのありさま! くそっ、奴らの忌々しい鳴き声が頭にこびりついてやがるっ。
溢れる怒りをぶつける場所を探しているのか、何かを掴むような手を宙に掲げてブルブルと震わしている。
「家鳴に悪戯されたんだね。……あれ、今、屏風の中って言った? 屏風の中で眠る……?」
「おう、あたぼうよ! 火消しの弥太郎またの名を、屏風覗きの弥太郎だ!」
屏風覗き。これは聞いたことのある妖だった。三門さんの薦めで、時間があるときに図書館で読んでいた『今昔百鬼拾遺』に記載されていた。
たしか屏風の付喪神だ。
「屏風に描かれた弥太郎の姿を借りてるんだぜ」
なるほど、そういう訳だったのか。屏風の素材は紙だ。浴槽のう上に逆さづりにされてしまえば、紙が湿気てしまうし、もしも浴槽に落ちてしまえば絵は消えてしまうだろう。だからあんなに必死に助けを呼んでいたのか。

