大きく両手を広げて首をぐるりと回し、ご丁寧に大見得をきった弥太郎。ぽかんとその様子を眺めていると、弥太郎がじろりと私を睨んだ。「あっ」と声をあげてから慌てて拍手を送る。弥太郎は満足げに頷いてその場に座った。
「俺ァ、火消しの弥太郎だ」
「火消しの弥太郎……」
「江戸に名を轟かせた男だぜ、知ってんだろ?」
日本の歴史は教科書に出てくる程度の知識しかないので、曖昧に笑って頷く。
「そんで、次の質問だな」
腕を組んで胸を張る弥太郎は、そう言ってしばらくその場に固まる。え、と目を瞬かせながら戸惑っていると、一気に顔を真っ赤にした弥太郎がこめかみに血管を浮かび上がらせながらいきり立った。
「べらぼうめっ、あいつら一匹ずつ茹でてすき焼きの具にしてやらねえと間尺にあわねえってんだ!」
くそ! と盛大に舌打ちした弥太郎に「落ち着いて」と声をかける。弥太郎は鼻息荒くその場に座る。
「家鳴にやられたんだ! あのクソ餓鬼どもっ」
家鳴? と聞き返すと、顔を顰めながら弥太郎は話し始めた。

