三門さんを呼ぼう、と踵を返したその時。
────おいっ、助けてくれ! 死ぬ!
さっきよりも切羽詰まった声が聞こえて、私はまた足を止めた。その間にも、声の主は「死ぬ! 殺される!」と喚いている。あわあわとその場で足踏みをして、私は風呂場へ駆け出した。
居間と廊下を挟んだ反対側にあるお風呂場の電気もやはり消えていた。しかし近付くにつれて助けを求める声は大きくなる。
ゆっくりと脱衣所へ続くドアを開けて、手さぐりに壁の電気をつける。ヴン、と低い音を立てて灯りが付くと、脱衣所と風呂場を隔てる磨りガラスのスライドドアに人影が写った。
思わずひゃあっと叫び声をあげると、「誰かいるのか!?」と風呂場から誰かが叫ぶ。
「誰でもいい! 後生だっから助けてくれ! このまんまだと溶けちまうっ」
あまりにも必死な声に、私は恐る恐るスライドドアを開ける。そして半分もあかないうちに、今度はお腹の底から叫び声をあげた。
乱れた髪の男が、浴槽の真上で逆さづりにされていたのだ。

