「……えっと、仁吉さんとふくりは一体」
「大親友ですねん」
「今すぐ失せろおとら狐ッ」
あまりにも剣幕なふくりにすこし戸惑う。
「生まれた年が同じでねな、まあみての通りふくりからは散々嫌われてて。ほんま悲しいわ」
牙を剥きだすふくりに、仁吉は肩を竦める。ふくりが否定をしないので、どうやらそれは本当らしい。ふくりは誰にでも分け隔てなく優しい。なのにここまで仁吉のことを嫌うだなんて、一体彼らの間に何があったのだろう。
「ここで何をしているんだっ。お前はおもてら町を追放されたはずだろう!」
追放!? と素っ頓狂な声で繰り返すと、仁吉さんはへらっと笑た。
「いや、別にとどまろうとは思っとらへんかってん。通過点やん、通過点。行商しながら旅しとったら、たまたまここ通った時に突然祓い屋があんな呪を使いよって。そらあもう驚いたわ。ほんでちょっくら探らせてもらっとったんよ」
ぴくりと耳を動かしたふくりは、相変わらず威嚇したままだ。仁吉さんはふくりのしゃがみ込むと「太ったんちゃう?」と尋ね、脛を噛まれていた。
「冗談やん。ほな、まあ歓迎されてないみたいやし。そう言うことで、お暇させていただきますわ」
片手をあげた仁吉さんは、またその場で飛び跳ねて一回転すると狐の姿に戻る。木の上で眠るみくりをちらりと一瞥すると、颯爽と走って行った。

