着地したその場所には、焦げ茶色の着流しを着た男がそこに立っている。獣耳を生やし、髪はさっきの狐の体と同じ黄土色、糸のように細い目をしている。
「どうもこんにちは、結守の巫女はん。おとら狐の仁吉て言います。以後お見知りおきを」
恭しく頭を下げた仁吉さんに、慌てて私も頭を下げる。
「初めまして、なかど……結守神社で巫女を務めています」
かげぬいに“妖に名を教えるな”と言われたことを思い出して、慌ててそう言いかえる。すると仁吉さんは笑顔でちっと舌打ちした。そんな仁吉さんに目を見開く。
「よう勉強されてますわ。妖に名を教えるなって、三門の入れ知恵か?」
「仁吉!」
今にも飛び掛かりそうなふくりを面倒くさそうに一瞥した仁吉さん。すると、ふくりの脇に手を通してひょいと持ち上げた。バタバタと足を動かしたふくりは「穢れた手で触れるなッ!」と暴れる。
「あんなあ、ちょっと黙って貰われへん? うち巫女はんと喋ってるんやけど」
「黙れ貴様ッ、消えろ! 今すぐに消えろ!」
尋常ではないほど暴れまくるふくりに戸惑いを隠せなかった。
仁吉さんはくつくつと笑うと、その体を腕の中にすっぽりと収めた。ひどく顔を歪めたふくりは仁吉さんの顔に蹴りを入れてその腕の中から飛び降りる。
体制を低くして、いつでも飛び掛かれる姿勢を取った。

