「ふくり、野生の狐がいる。ふくりと喋れるかな?」
「野生の狐? あっ、手を引っ込めな麻!」
飛び起きたふくりに驚いて、反射的に手を引っ込める。近付いてきた狐がくわっと歯をむき出しにした瞬間だった。
毛を逆立てたふくりが、私とその狐の間に入る。
「おとら狐ッ!」
珍しく牙をむいたふくり。何事だと目を白黒させる。助けを求めるように木の上のみくりを見上げるが、こちらをみるどころかピクリとも動かない。みくりの馬鹿、と心の中で悪態をつき、落ち着くようにとふくりのと背を撫でた。
「ケッ、神使やからってお高くとまりよって。あーあ、嫌やわ」
少し高い声が聞こえたかと思うと、その狐がにたりと笑ったような気がした。
全身の毛を逆立てて、激昂に近い勢いで唸り声を上げるふくり。話の流れからすると、どうやらふたりは知り合いらしい。
その狐はククッと喉の奥で笑うと、一歩後ろに下がってその場で飛びはねた。宙でくるりと一回転するとポン! と小さな煙をあげた。

