大切そうに懐へしまったかげぬいが、「そうだ」と何かを思いついたのか手を打った。
「巫女さま、すこしここでお待ちください」
ひとつ頭を下げてかげぬいはいそいそと木の陰へと消えていく。
「ええい面倒くさい。帰るころに起こせ!」
不機嫌にそう言ったみくりは木の枝に飛び乗ると、器用に体を丸めて尻尾に顔を埋めてしまった。どうしよっか、とふくりとで顔を見合わせる。かげぬいが直ぐに帰ってくる気配がなかったので、ふくりを膝の上に乗せ、木の幹にもたれるようにして座った。
一つ伸びをして耳を澄ませる。さわさわと葉を揺らす風が心地よかった。
「気持ちいいね、ふくり」
「天気がいいからねえ」
まったりと空を見上げていると、背後でがさがさと落ち葉を踏みしめる音がした。弾けるように振り返ると、動物園でよく見るような黄土色の狐が立っていた。
みくりやふくりよりも一回り小柄な体格をしている。左足をひきずっているので、どうやら怪我をしているようだ。可愛そうに、と眉根を寄せる。ちちち、と片手を差し出すと、狐は人懐っこい性格なのか直ぐにそばまで寄ってきた。

