「鎌鼬《かまいたち》の軟膏。巫女さま、これはいただけません。たいへん高価なものです」
開けた次の瞬間には蓋を閉じた影縫い。その素早さに目を丸くする。
「そんなに高価なの……?」
「即効性のある万能薬だ。妖一匹ならひと月は暮らせるぞ」
妖の世界の相場がいまいち分からないけれど、それはとても高価であるというたとえらしい。かげぬいは私に貝殻の入れ物を握らせる。
「こんなおいぼれのために使うべきものではありません。持ち帰って、怪我をした子どもたちに使って下さい」
そう言われてしまい、行き場を失った軟膏とお爺さんの顔をおろおろと交互に見る。するとあしもとに座ってふくりが口を開いた。
「三門の意思は結守神社の意思、つまりユマツヅミさまのご意志でもあるということだよ」
「ふくりさま……」
困ったように眉を下げたかげぬい。私がもう一度「はい」と差し出すと、渋々ながらもそれを受け取った。

