「…あんた、名前は?」 『…え、』 「名前を教えてくれ。」 そう聞かれ、答えるべきかを迷ってしまう。 …個人情報の悪用は、僕が誰より身近だと知っている…。 でも、もうどちらにせよ今日終わらせる身…それならば、何をされようが関係がないだろう。 『…佐藤悠、です。』 「…そうか。」 …待って待って、 『あなたは…?』 そう聞くと、少し目を逸らしてしまう。 『え、あ、あの…!?』 「…名、などないのだ。」 その言葉に、少し体が固まる。