「試合が終わって、このスタジアムを出ると、君が待っててくれた。『先輩、お疲れ様でした。』あの時の笑顔に、俺は一発で惚れた。いや、その前から好きだったけど、あの笑顔を見た瞬間、ここで告白しよう、そう決めたんだ。」


「はい。『成川、本当は勝って、カッコよく告白したかった。でも、俺にはその力がなかった。だけど、お前を思う気持ちは世界中の誰にも負けない自信がある。お前が好きなんだ、付き合ってくれ。』って言われて、私も一発で先輩に落ちました。」


「俺、そんなクサいこと言ったっけ?」


「はい。一言一句、正確に覚えてますよ、先輩。」


そう言って、イタズラっぽく自分を見た私に、照れ臭そうな表情を浮かべた隆司さんは


「ここさ、もうすぐ取り壊されるんだ。」


と意外なことを言った。


「どうして?」


「だいぶ老朽化が進んで、住宅街の中っていう立地条件も悪くて、取り壊されて建売住宅がいっぱい立つ計画らしい。」


「そうなんだ・・・。」


ちょっと寂しいな・・・。


「少し前に聞いて、一緒に来ようって誘うつもりだったんだけど、まぁ、それどころの騒ぎじゃなくなっちまって。」


そこで一瞬、間をおいた隆司さんは


「でも、どうしても最後に一緒に来たくて。俺達にとって原点ともいうべきこの場所で、どうしても成川に伝えたいことがあって、今日は誘わせてもらった。」


そう言うと、隆司さんは私を見た。


「成川、俺は君が・・・好きだ。」


えっ・・・まさかと思ったことをストレートに言われて、私は息を呑む。


「俺と付き合って欲しいんだ。」


私は、そう言って真っすぐに私を見つめる彼の顔を、呆然と見つめていた。