「でも・・・いいのかな?」


「なにが?」


「だって、私達・・・。」


「別にいいじゃないか。離婚に際して、お互いに接触禁止を取り決めた覚えはないし。会って食事するのに、誰かに遠慮しなきゃならない覚えもない。でも・・・成川が気が進まないというんなら、無理強いするつもりはないよ。」


そうだよね、別に会ったり話したりすることを禁止されてるわけじゃないんだもんね。後は自分の気持ちだけ。


結局、私は久しぶりに隆司さんの助手席に乗り込んだ。乗り慣れた車なのに、なぜか凄く懐かしく思える。


「何か食べたいもの、ある?」


「ううん、なんでもいいよ。」


「じゃ、任せてもらうよ。」


そう言って車をスタートさせる隆司さん。


「仕事、大変か?」


「まぁね。でも、楽な仕事なんかないし。」


「そうだよな、立ち仕事だしなぁ。成川はなんでも真面目に取り組むから、頑張り過ぎるなよ。」


「ありがとう。でも生活が掛かってるからね、あんまり甘えたことも言ってられないし。」


そう答えた私に、隆司さんは少し複雑そうな表情になる。


「あなたの方こそ、大丈夫?疲れてない?子供達に聞くと、食事はほとんど外食だって。」


「まぁな、でも徐々に自炊率上げてるから。」


苦笑いを浮かべて、隆司さんは答える。


ぎくしゃく感はあったけど、それなりに会話を交わしながら、私達のドライブは続いた。


40分程走って、ファミレスが目に入ったので、そこに入る。食事を摂りながら、私達はここ1ヶ月の間のお互いの出来事を報告し合う。


そうこうしているうちに、最初のぎくしゃく感はどこへやら、いつの間にか、夫婦に戻ったような空気に包まれる。


そんな自分達に、ホッとしたような安心感と、でもやっぱり何か違和感のようなものを覚えて、不思議な感覚に陥ってしまっていた。