「もちろん離婚してよかったね、なんて言うつもりはないよ。でもさ、結局お互い様だったんだから。どちらかが一方的に悪いわけでもないし。朱美だって、今までいろいろ我慢してたこととか、あったでしょ。だからこれからは・・・。」


「そんなこと・・・ないよ。」


私を慰め、励まそうとしてくれてる春希の言葉を遮るように私は口を開いた。


「えっ?」


「そんなこと、絶対・・・ない。」


「朱美・・・。」


絞り出すような声で、そんなことを言い出した私を、驚いたように春希は見る。


「愛はあるよ、永遠の愛はある。それは幻でも、理想論でもない。私達は確かに貫けなかった、でも絶対にあるんだよ。」


俯いたまま、目にいっぱいの涙を溜めて、必死に訴えるようにそんなことを言う私を、しばし見つめていた春希はやがて


「愛してるんだね、先輩を。」


と感に耐えないように言った。


「先輩が好きで好きで、どうしようもないくらい大好きで、でもだからこそ、別れなきゃならなくって・・・。切ないね、辛かったね、朱美・・・。」


その春希の言葉に


「私、何してたんだろう?ちゃんと愛してたはずなのに、ちゃんと愛されてると思ってたのに。なんで裏切ったんだろう?なんで裏切られちゃったのかな?どこで間違っちゃったのかな・・・?」


ずっと堂々巡りのようにわだかまっていた思いが、とうとう口に出てしまう。そして、それと同時に涙が・・・。


「朱美、人間、魔が差すってこともあるよ。仕方ないよ。だから、そんなに自分を責めないで。」


私を慰めようと、そんな言葉を掛けてくれる春希に、私は頭を振る。


「朱美・・・。」


そんな私に、春希は掛ける言葉を失っていた。