沈んだ心を奮い起たせて、朝食を済ませて、洗濯と掃除。


でも、家の広さは当然比べ物にならないし、洗濯も自分一人分。今までに比べたらあっと言う間に終了で、手持ち無沙汰に。


通っていたカルチャースクールは、もうそんな余裕はないからと辞めてしまった。離婚のことは、自分の親と義両親はもちろん、相談をさせてもらった友達には、報告をした。


辛かったのは、義両親への報告の時だった。揃って報告に行くのも変なので、出向く前に電話を入れるとお義母さんが出て、もう息子から聞いているから、わざわざ来てくれなくてもいいと言われてしまった。


こんなことになってしまい、申し訳ございませんと電話口で詫びる私に


「ウチのバカ息子の不始末なんだから、こんなことを言っちゃ、いけないんだけど、15年前の話なんだから、なんとか我慢してもらえないかしら。」


と言うお義母さんに、言葉を失う。どうやら隆司さんは、自分の不始末だけで離婚することになったと、ご両親に取り繕ってくれたらしい。


彼は私を思い遣ってくれたのだろうが、やはり彼一人を悪者にする気にはならず


「隆司さんから、どうお聞きになってるのかはわかりませんが、今回のことは隆司さん一人の責任ではありません。本当に申し訳ございませんでした。」


と言うと絶句された。


「これまで可愛がっていただいたのに、このような次第となり、お詫びの言葉もございません。お世話になりました。」 


せめてものことで、受話器を持ったまま、深々とお辞儀をして、私は電話を切った。


一方の隆司さんは、私が家を出た日の夜、仕事帰りに私の実家を訪れ


「娘さんを必ず幸せにするというお約束を守ることが出来ず、お詫びの言葉もございません。」


と土下座せんばかりに謝罪の言葉を述べ、そんな彼に両親は掛ける言葉もなかったそうだ。


それを聞いた私は、胸が痛んだが、もはやどうすることも出来なかった。