「母さんがいない家、母さんの荷物がもう何一つない家。とにかく味気なくて、無駄に広く感じて・・・思春期の頃、正直母さんのことが鬱陶しくて、仕方ない時期があった。あの頃の自分を今、思いっきりぶん殴ってやりたいよ。」


そう言って、少し目を伏せた次男は、またすぐに私を見た。


「まぁ、今まで母さんにおんぶに抱っこで安穏と暮らして来た報いだよな。だから、父さんと2人で、必死こいて、とりあえずはやってくよ。まずは今度の週末、溜まった洗濯と掃除。一応、一通りは使い方はこの前習ったから、チャレンジしてみるよ。」


そう言って次男は笑った。


「ただ飯がね・・・結局2人とも今のところ、外食かコンビニ弁当に逃げてるけど、これも週末はちょっとやってみるつもり。」


「それじゃ、身体に悪いよ。作りに行ってあげようか?」


と思わず言ってしまうと


「待ってました、って言いたいとこだけど、それじゃダメ。」


「えっ?」


「それじゃ意味ないじゃん。ただ母さんの優しさにつけ込んでるだけだもん。次に母さんが、もしあの家に帰って来てくれる時が来るとしたら、それは家族として、西野朱美として帰って来て欲しいから。」


「清司・・・。」


「だから、俺はちょくちょく泊まりに来る。その環境整備の為に。」


「えっ?」


「言っただろ?母さんに男作らせないように監視しに来るって。それされたら、もう取り返しがつかないから。」


一瞬、言葉を失ったけど


「何言ってるの?結局自分が楽したいだけでしょ。」


と言ってやると


「あっ、バレた?」


とイタズラがバレた子供よろしく、舌を出した。


「別にそれでも構いませんけど。」


次男が来てくれるのは、実は大歓迎の私は、でも顔はしかめっ面で、そう答えていた。