次男がやって来たのは、8時くらい。やはり少しずつ、帰りが遅くなってるようだ。


「布団ありがとう。カバー掛けてよ。」


「えっ?そのくらい自分でやんなよ。」


「いいじゃん。せっかく可愛い息子が、泊まりに来てやったんだから。あと、ワイシャツ洗ってよ。明日また、これ着て行かなくちゃならないから。」


とさっそく、甘えモード全開で、一瞬呆れるが、実は嬉しかったりもする甘々母。


夕飯は焼き肉で


「あれ、カレーじゃないの?」


と聞かれ


「カレーはもう食べ飽きた。」


と思わず答えてしまう。実は初日に作った
カレーを、ずっと温め直して食べていて、よく考えると、家を出る前の日から、ずっとカレーで、さすがにウンザリしていた。


「フーン。ま、焼き肉なら文句ないけど。じゃ、いただきます。」


とひと口、頬張った次男は途端に笑顔。


「美味い、オフクロの味〜。」


と私の前に親指を突き出す。その仕草に私も嬉しくなって


「いただきます。」


と箸を取った。


「仕事、どうなの?」


「うん、立ちっぱなしで疲れるけど、面白いよ。」


「母さんは接客業向きだよ、性格も容姿も。」


「なに言ってるの。」


久しぶり・・・じゃなかった4日ぶりの会話をしながらの食卓が嬉しい。


「そっちは・・・大丈夫なの?」


私もずっと気になってることを聞く。


「無理。」


「えっ?」


「母さんの有難味、偉大さを毎日痛感してるよ。」


悪びれもなく、答えた次男は


「ゴメンな。」


と謝って来た。


「どうしたの、急に。」


「母さんが俺達の身の回りの世話をして、家事してくれること、当たり前に思ってた。でも、そんなの全然当たり前でも何でもなかったことにようやく気付かされた。もっと感謝すべきだった、もっと母さんを労るべきだった。本当に大切なものは、失わないと気が付かないんだって、思い知らされた。」


「清司・・・。」