仕事は思ったより、順調だった。渋谷さんが優しく、丁寧に指導してくれたし、店長も何かと気に掛けてくれるのも、ありがたかった。


商品知識もレジ操作も、順調に頭に入った。だいぶ頭が固くなってるからと、心配だったけど、意外とイケるなと、ホッとした。


スーパーでの接客の経験も、主婦としての目線や知識も役にたってる。今までの人生、決して無駄じゃなかったんだな、なんて、ちょっと大げさに思ったりもした。


勤め始めて3日目、明日は初めての休日という日の夜、次男が泊まりに来た。


昼休みに携帯を開くと、次男からメールが入っていて、今晩泊まりに行くからと一言。行ってもいい?じゃなくて、決定事項の通達のような内容で、苦笑いしながら


『構わないけど、布団がないよ。』


と返信すると、まだ休憩時間だったみたいで


『布団は買って、そっちに送ったし、自分の食器や洗面道具も、買って行くから。』


えっ?送ったって、急に言われても受け取れないしと困惑していると


『19時から21時の間に着く便で送ったから、買い物のあと、真っすぐ帰って、待ってるように。』


と追伸が。全く母親に対して、何偉そうな言い草と思いながらも、嬉しくなっちゃった。


どうやら顔に出てたらしく、売場に戻ったら渋谷さんに


「どうしたんですか?何かいいことあったんですか?」


と聞かれて


「今晩、息子が泊まりに来ることになって。」


と思わず言っちゃって、渋谷さんには私の事情、何にも話してなかったんだって、ハッとしたけど


「それはよかったですね。」


と笑顔で、何事もなかったように返してくれた。


入社1ヶ月は残業不可とは言われてるけど、この日はバチッと定時に上がり、買い物もサッと済ませて帰宅。


久しぶりの次男との夕食を張り切って作り始めて、久しぶりって、まだ家を出てから4日目じゃないって、気付いてまた苦笑い。


布団も受け取り、夕食の準備も万端。後は次男の帰り・・・じゃなくて来訪を待つばかり。