それでも、贅沢は敵。そう自分を奮い起たせて、買い物を済ませて帰宅。


買って来た食材を、冷蔵庫に収め、食卓の椅子に腰を下ろして、フッとため息をつく。


(疲れたな・・・。)


実感だった。スーパーに勤め始めた時、私はギリギリ30代だった。約20年ぶりのお勤めだったけど、何かいろいろなことが新鮮で、疲れも感じたけど、それ以上になんか興奮してたなぁ。


自分がそれだけ年をとってしまったということか、それとも・・・。


あの時は、聞いて欲しくて、夢中になって、夕飯の時に、いろんなことを家族に話した。夫も子供たちも、どのくらい、真面目に聞いてくれてたかは疑問だったけど、でもそんなこと関係なかった。


そして今、1Kの部屋に1人。昨日の朝まで暮らしていた空間の広さとは、比べるべくもなく、人の温もりも感じることが出来ない。


(1人、なんだな・・・。)


生まれてから、今まで、誰かが一緒にいた。親、きょうだい、夫、子供、「家族」と呼べる存在が必ず側にいた。それが当たり前だと、思ってた・・・。


だけど、これからは1人。それが当たり前の日々が続くんだ。


(隆司さん、何してるんだろう?清司はちゃんとワイシャツのあるとこ、わかるかな?)


携帯を取り出して、ボタンを押しかけて、思い留まる。2人が心配だからじゃない、ただ自分が寂しくて、声を聞きたいだけだって、わかってるから。


友達だって、こんな時間に電話されても迷惑だろう。私は携帯を置いた。


(なにやってんだ。一人暮らし2日目で、もう音を上げるなんて、情けなさ過ぎる。自分で決めたことでしょ、朱美!)


自分で自分をそう叱咤すると、私は夕飯の準備に立ち上がった。