いよいよ明日は引っ越し。20年あまり住んだ家には、自分の荷物がこんなにあったんだと、我ながら驚く。


当然、全てを新居に運び込むことなど、出来るはずもなく、また運び込む必要もなく、一部は処分し、一部は実家に送った。


共有の物については、家電を含め


「必要だと思うものがあったら、遠慮なく持っててくれて構わない。こっちは買い直せば、いいんだから。」


と言ってもらったけど、そう言われるとかえって遠慮してしまうものだ。


写真などの思い出の品も、やはり欲しいものは、遠慮なく。残りはこちらで保管するなり、処分するなりするからとのことだった。


そうこうしているうちに、次男、夫と相次いで帰宅。このところ、夫は家で全く食事を摂らなくなっていたが、今夜は最後なんだからと私から頼んで、夕食を共にすることにした。


夕飯の準備、家族で一緒に摂る夕食。何十年も当たり前のように続けて来たことを、もうこれでしなくなる、出来なくなるんだと思うと、やはり感慨もひとしおだったし、いろんなものがこみ上げて来るのは、抑えられなかった。


それでも、久しぶりに3人で摂る夕食は、特別なことを話したりすることはなく、いつものような雰囲気。それっぽいことは


「もう全部準備は終わったの?」


と次男から聞かれたくらいだった。


「ごちそうさま、美味しかったよ。」


夕飯が終わると、夫が笑顔でそう言った。


「明日は久しぶりに日帰り出張で早く出るから・・・朝食はいらないよ。」


そう言い残して、夫はダイニングを出て行く。続いて、次男もごちそうさまとポツンと言い残して、席を立ち、私は後片付けにキッチンへ入る。


何事もないかのように時が、過ぎて行く。