「お母さんは・・・魔法使いだな。」


家に上がるなり、夫が言う。


「魔法使いなんかじゃない、私の仕事だから。でもお父さん、あまりにも無責任すぎない?散々やり散らかした挙げ句、実家に逃げちゃうなんて。」


「すまん。本当はSOS出そうと思ったんだ。でも1週間連絡禁止の約束だったから・・・。」


「わかりました。とにかく着替えて来て下さい。ご飯食べてしまいましょう、この後大事な話があるんだから。」


「はい。」


バツ悪そうに2階に上がって来る父親を、着替え終わった次男がニヤニヤしながら、出迎える。思ったより、私達の様子が明るいので、次男もホッとした様子だ。


夕飯はカレー。時間がなかったこともあったけど、我が家は何かある時は、いつもカレーだな、なんて作りながら思っていた。


食べながら、当たり障りのない内容だけど、結構会話が弾んだ。


「やっぱり母さんのカレーは最高だな。」


次男の言葉に、夫が頷いていて、私も笑顔。


だけど、後片付けが終わり、私が再び食卓につくと、空気は一変、ピンと張り詰めたものになる。


「俺、席外した方がいいか?」


思わず、そう聞いて来た次男に


「ううん、清司もちゃんと聞いてて。」


と私は答える。頷いた次男が、席に座り直したのを見届けて、私は夫に視線を向けた。