「朱美、お前が他の男に抱かれた情景をリアルに想像してしまう。身の毛もよだつ、吐き気がしてくる。お前を殺してしまいたい程に憎み、相手の男を地の果てまでも追いかけて、徹底的に制裁してやりたいと思う。だけど・・・お前が俺を愛しく思い、俺だけの妻でいてくれた時間は、俺を裏切っていた時間の何百倍もある。それもわかってるんだ。」


夫は絞り出すように、そう言った。


「俺はお前に、お前との家庭になんの不満もなかったのに、欲望に負けて、不倫をした。あの時の俺の行動に正当性なんか、欠片もない。1年半、やりたい放題なことをしてた俺の目を覚まさせてくれたのは、お前の俺への偽りない愛情だった。俺は心から悔い、一生かけて、自らの愚かな行動を朱美に償おうと誓って、俺は家庭に戻った。なのに・・・お前と一緒にいることに慣れ、お前が側にいるのが当たり前になって、いつの間にか、お前を蔑ろにするようになっていた。自惚れではなく、俺だけを見て、俺だけを愛してくれてたはずのお前を、不倫に走らせたのは、間違いなく俺だ。俺の傲慢な心だ、スマン。」


そう言って、夫は私に頭を下げる。


「俺はお前を許したい、そしてお前に許してもらいたい。さっき朱美も言ってくれたように、俺も、お前のことが今でも好きだよ。だけど・・・やっぱり許せない。例え3ヶ月でも、お前は身体だけでなく、心まで他の男に委ねた。その事実は、やっぱりつらい。これからも忘れることは出来ないと思う。そして、それは朱美も同じだと思う。」


夫のその言葉を聞きながら、私は涙が止まらない。そして、夫の目からも溢れるものが。


「私達、どうしたらいいの?もうやっぱりダメなのかな・・・。」


私のその言葉に、夫は唇を噛み締め、俯き、でもなんの言葉も返してはくれなかった。