週が明け、俺は穂乃果に別れを告げた。一緒に過ごした誕生日から、わずか2日後の俺の豹変が当然受け入れられるはずもなく、穂乃果はその言葉を拒否し、泣いて俺に縋った。


だが、俺の気持ちが変わらないのを見て


「だったら、会社にも奥さんにも全部話すから。それでもいいの?」


とまで言って来たが


「君の好きにすればいい。全て、俺が自分で引き起こしたことなんだ。その結果は、甘んじて受け入れるよ。」


との俺の答えに、遂に諦めた。泣きじゃくる穂乃果に、俺はせめてものお詫びの印にと、いくばくかの現金の入った封筒を差し出したが、中身を確認することもなく


「人をバカにするのも、いい加減にしてよ!」


と怒鳴ると、駆け去って行った。


翌日、叩きつけるように辞表を、俺に突き付けた穂乃果は


「これで満足でしょ、さようなら!」


そう言い放って、他に誰もいないオフィスを飛び出して行った。それは、彼女の俺に対する最後の愛情だったに違いない。


そんな彼女の後ろ姿に俺は、黙って頭を下げることしか出来なかった。


こうして、俺は何事もなかったように、妻のもとに、家庭に戻った。


そして、これと時をほぼ同じくして、俺の仕事は今までのように決して順風満帆ではなくなって行った。社会情勢や景気動向はもちろん、あったろう。しかし、彼女が去って、俺はいかに穂乃果のサポートを受けていたかを思い知った。仕事の上でも、そしてプライベートでも・・・。


俺は、決して勝ち組なんかじゃなかった。そう、宴は、終わったんだ・・・。