冬。穂乃果との関係も1年半が経とうとしていた。


この日は土曜日だったが、俺は出勤すると妻に告げて、いつもより早めに家を出た。


実は、今日は穂乃果の24回目のバースデー。去年はあるホテルに泊まって、一緒に過ごしたが、今年は仕事が立て込み、翌日の日曜も子供の学校行事の役員になってて、朝が早く、泊まりは無理。


俺は週をずらすことを提案したが、穂乃果はどうしても、当日に一緒に居たいと言う。


クリスマスやバレンタインと言った、他の行事はいつも俺の家族が優先だから、自分の誕生日くらいは・・・という穂乃果の気持ちはわからなくはない。だから、少しでも時間を作りたくて、俺は朝早く家を出ることにした。


待ち合わせ場所には、おめかしした穂乃果が、待っていて、俺の姿を見ると、とびっきりの笑顔で、駆け寄って来る。


「おはよう、今日はありがとう。我が儘言ってゴメンね。」


「おはよう。大丈夫、俺の方こそ、せっかくの誕生日なのに、ずっと一緒に居られなくてゴメン。」


「ううん、夜まで隆司と一緒に居られるんだから、それだけで私は嬉しい。」


そう言うと腕を組み、甘えて来る。10歳年下の子に、呼び捨てにされて、いい気になってる俺は、照れもせずに一緒に歩き出す。


午前中は、穂乃果のリクエストで、映画を見て、その後は、予約してあるレストランの個室で食事。


夜景を見られる時間じゃないのが残念だが、食事はそれなりに奮発したし、デザートのケーキはバースデー仕立て。プレゼントはネックレスにサプライズで花束も。正直言って、妻の誕生日にここまではしない。


「隆司、ありがとう。」


喜んでくれたのだろう。目にいっぱいに涙をためて、そう言いながら、胸に飛び込んで来た穂乃果を抱き止めた俺は


「ハッピーバースデー、穂乃果。」


と言うと、そのまま唇を重ね合った。