「知ってたの、花言葉の意味?」


思わずそう尋ねると


「いや、さっきスマホで調べた。」


と言って、微笑する夫。


「そっか。」


「今の俺達には、ちょっと重い、かな・・・。」


「隆司さん・・・。」


その言葉に、私が少し悲しい思いで、夫を見ると


「お前に、受け取って欲しい物があるんだ。」


といきなり、私に小さい包みを差し出す夫。思わず手に取って、そして夫を見上げる私。


「開けてみてくれないか。」


「うん。」


リボンを解き、包み紙を開き、そして現れた小さな箱。私は少し緊張して、その箱を開ける。


そこには・・・リングが。銀をあしらった文字通りの「シルバ-リング」。驚いて、夫を見つめる私の手から、一回リングを受け取ると、夫は私の左手を取って、その薬指にそっとはめてくれる。ひと月前から、また着け始めたリングの上に重ねて。


「隆司、さん・・・。」


潤んだ瞳で、夫を見つめる私に


「後で見てくれ。『TtoA 25th Year』って裏に刻んであるはずだ。いつ渡そうか、ずっと迷ってた。あの再プロポ-ズの時も考えたけど、やっぱり今日。それも2人きりになった時に渡そうって。」


「でも・・・これ当然、オ-ダ-メ-ドだよね。よく間に合ったね・・・。」


「注文したのはGW前、だったかな・・・。」


その夫の返事に、私は息を呑む。


「じゃあ・・・。」


「まさか、渡せなくなる可能性が出てくるなんて、思ってもみなかったから。」


そう言って苦笑いする夫。


「なんでキャンセルしなかったの?」


「さぁな。馬鹿みたいに信じてたのかな?絶対に渡せるって。新しい指輪を渡すどころか、マリッジリングも突き返されそうだったのに。」


その言葉を聞いた瞬間、私の目から、涙がこぼれた。