「でも正司、本当は彩乃さんに、私達のこと話してたんでしょ?」


「えっ?」


私の言葉に、清司は驚くけど、正司はやっぱりバレてたか、って表情になる。


「彼女がウチに挨拶に、って話になって、さすがに本当の理由は言えなかったけど、ウチの親、ちょっといろいろあって今、別居してる。オフクロを家に呼び寄せるいい機会だから、協力してくれって頼んだ。」


「やっぱり・・・。」


「彼女も、どうなるんだろうって、不安一杯だったみたいだけど、いざ2人に会ってみると、とっても仲良さそうで、いい雰囲気で。無理して取り繕ってるようにも見えなくって、なんで別居してるんだろうって、不思議だったらしい。だから、思わず『今度遊びに来てもまた会えますよね?』って言っちゃったんだって。」


初対面の息子の彼女に、そんな気を遣わせてしまった私達は、やっぱり駄目だね・・・。


「確かに、今日お母さんが、この家に帰って来てくれたのは、本当にいいきっかけになった。背中を押してもらったよ。今日がなかったら、俺達はまだ会う勇気が出てなかったかもしれない。それは感謝だが、彩乃さんを巻き込んでしまったのは、やっぱり申し訳ないことをしたよな・・・。」


その思いを口にした隆司さんに


「俺も迷ったよ。でも、思ったより時間かかってたからさ。」


「えっ?」


「清司から話聞いた時は、あちゃ~、2人して何してくれちゃってんの?って思ったけど、まぁ、それでもせいぜい2ヶ月もあれば、収まると思ってたから。」


「・・・。」


「なんだかんだ言って、父さんと母さんが離れられるはずないからさ。」


「正司・・・。」


「それに元々離婚する気なんてないくせに、なにいつまでも意地張ってるのかとも、思ってたし。」


「えっ?」


「兄貴、それ、どういう意味だよ?」


驚く隆司さんと清司を見て


「えっ、母さん、まだ本当のこと、話してないの?」


と正司に視線を向けられ、私は思わず俯いた。