「朱美。」


「うん?」


「今日はありがとう、来てくれて。朱美がいなかったら、絶対に間に合わなかった。ダメだな、俺達は。」


「仕方ないよ、まぁでも普段なら、全然大丈夫なレベルだったよ。私が知ってる2人からは、考えられないくらい。成長したじゃん。」


そう言って笑うと


「お褒めにあずかって、光栄です。」


と隆司さんも笑顔で、そう返したあと


「でも朱美がいてくれるだけで、こんなに家の雰囲気が変わるんだな。玄関の花もそうだけど、家の中が本当に華やいだ雰囲気になって。君がいなくなってからの、この家は殺風景で、ただの寝床になってたって、今更ながら気が付いた。」


「隆司さん・・・。」


「朱美は家族の為に、俺達が快適な生活を送れるように、ずっと心を配ってくれてたんだよな。」


「私は、あなたが私のために建ててくれたこの家を少しでも綺麗に保ちたかった。ただ、それだけ。」


「その朱美の思いを当たり前だと、錯覚したのが、全ての過ちの始まりだったんだ。改めて、思い知ったよ。」


そう言うと、隆司さんは俯いた。そんな彼を、私は少し見ていたけど、改めて、座り直して呼びかけた。


「隆司さん。」


「うん?」


「今日、久しぶりにこの家に来てね。つくづく思った。あ、ここが私の家なんだ。私が居たいのは、居るべき場所はやっぱりここなんだな、って。」


「朱美・・・。」