それからは、和やかな雰囲気で時間が過ぎて行った。


普段は長男のことを「マーくん」と呼んでいると、恥ずかしそうに告白した彩乃さんは、本当に可愛いかった。


話が思ったより弾み、せいぜい30分だろうと言った長男の見込みと違い、1時間を優に超えた。彩乃さんはすっかり打ち解けてくれて


「ご迷惑でしょうけど、またお邪魔させて下さい。」


とまで言ってくれた。


「是非、いらっしゃい。いつでも歓迎だよ。」


と言う隆司さんの言葉に、彩乃さんは嬉しそうにお礼を言っていた。


そして、帰り際


「このお花、お母さんが選んだんですか?」


と聞かれ


「ええ。」


と答える私。


「とっても綺麗です。緊張して、入って来た時、目に入って、心が和みました。ありがとうございました。」


「どういたしまして。」


そう言って、笑顔を交わし合ったあと、フッとその笑顔が消えて、彩乃さんが私の顔を見る。


「どうしたの?」


「いえ・・・今日はとても楽しかったです。皆さんに暖かく迎えていただいて、とっても嬉しかったです。ありがとうございました。」


「こちらこそ、彩乃さんに会えて、とっても嬉しかった。よかったら、また来てちょうだいね。」


「はい、喜んで。あの・・・。」


「なに?」


「今度お邪魔した時も、またお会い出来ますよね?」


「えっ?」


何やら不安げな面持ちで、そんなことを聞かれて、驚いていると


「じゃ、そういうことで。父さん、母さん、またね。アヤちゃん、行こう。」


慌てて、長男が割って入るように言って、彩乃さんを促す。


「うん。じゃ失礼します。」


丁寧に一礼して、彩乃さんは長男と共に帰って行った。


「よかったな、いい娘さんで。」


「どうなってんの?兄貴があんな可愛い子、捕まえるなんて。」


とたんにうるさくなる男性陣。


「お兄ちゃんを羨んでる場合じゃないでしょ。あんたも、休みの日に私のとこばっかり来てないで、ガールフレンド探せばいいじゃない。」


と次男に言ってやると


「ま、俺もこれからデートだけどね。」


「えっ?」


「と言うことで、後はおふたりでごゆっくり。」


と言うと、呆気にとられる私と隆司さんを残して、次男も風のように去って行った。