「渋谷さん。」


「はい。」


「西野と再会する前から、私のこと、彼の妻だって、わかってたよね?」


「はい。」


「どうして?」


「直接お会いしたことはありませんが、私は何度か成川さんのお顔を拝見したことがあったんです。」


「えっ?」


「課長が当時、待ち受けにされてたご家族の写真を何度か見せていただいたことがあって。綺麗な奥さんだなって思って、印象に残ってました。」


うわ、そんなお世辞使われても・・・。


「その写真に写ってる皆さんは、本当に幸せそうで、課長もウチの嫁さんは最高だ、結婚はいいもんだぞって、よく部下に惚気けてて。私はその時、既に今の夫と付き合ってましたから、ああ課長のとこみたいな仲良しの夫婦になりたいなって、憧れてました。」


「・・・。」


「だから・・・初めて成川さんにお会いした時は、正直ショックでした。まさか、なんでって。本当は、何があったんですかって、それこそ根掘り葉掘り聞きたかったです。もちろんそんな失礼なこと、出来るはずないですけど。」


そんな渋谷さんの言葉に、私は複雑な思いを抱かざるを得ない。


「もうお察しのことと思いますけど、私達夫婦、うまくいってないんです。3年も離れてると、いろいろすれ違いも出て来て。でも、それは仕方ない部分もあるんだろうな。頑張って乗り越えて行くしかないよなって、思ってました。少なくても私は夫を愛してますし、彼もたぶんそう思ってくれると信じてましたから。でも、何があったのかは、知りませんでしたけど、課長・・・西野さんのとこですら、壊れてしまったのかって考えてると、だんだん不安が募って来てしまって。そこに今回の事態になって・・・。今はハッキリ言って、向こうに女がいるんじゃないかって疑っています。」


そう言い切った渋谷さんの顔を、私は凝然と見つめてしまっていた。