春希の言葉通り、その後、私達は本当に呑んだ。いろんなことを喋り、いっぱい泣いたように思うんだけど、ほとんど記憶がない。


気が付けば、着の身着のままで、ベッドの上。激しい頭痛で目が覚めると、カーテンから漏れる朝日が目にしみる。


「おはよう。どう、ご気分は?」


その声の方を向くと、既に身支度を整えた春希の姿が。慌てて身を起こすけど、ズキンと痛む頭に顔をしかめる。


「二日酔いか、まぁ仕方ないね。朱美って、こんなに呑めるの、って言うくらいに呑んでたからね。」


と笑う春希。


「ひょっとして、ベッド占領しちゃった?ゴメンね・・・。」


「そんなの平気。でも、昔から優等生そのものの朱美の恥態を、初めて目のあたりにして、ちょっと引いたかな?」


「えっ、私何した?」


「嘘だよ、冗談。ただ酔っ払ってただけ。私がかなり呑ませちゃったから。私の方こそ、ゴメン。」


頭を下げる春希。


「でも、朱美の本音は聞かせてもらったよ。」


「えっ?」


「『私は好きなの、誰になんて言われようとやっぱり隆司が好きなの!』って泣きながら叫んでた。あんたが先輩、呼び捨てにしたのも初めて聞いた。」


そっか、私、そんなことを・・・。


「1回、ちゃんと話しなよ。」


「えっ?」


「確かに一緒にドライブしてたって、かなりクロっぽいけどさ。でも、キスしたりイチャついてるとこ、見たわけでもないし、第一、あんたがちょうど退社する時間帯に、わざわざ会社付近通るなんて、いくらなんでも警戒心なさ過ぎじゃない?まぁ、見られても構わないくらいに開き直ってたのかもしれないけど。」


「・・・。」


「もう時間だから行くね。朝食はあるもの、適当に食べてよ。なんなら別にもうひと晩泊まってくれても構わないし、帰るなら、ここにカギ置いとくから。今度会う時に返してくれればいいよ。じゃ、行って来ます。」


そう言って、出掛けようとする春希に、私は慌ててベッドから抜け出すと


「行ってらっしゃい、春希。」


「うん?」


「ありがとうね。」


「どういたしまして。」


そう言って、笑顔を残すと、春希は出て行った。