春希からは、やはり返信はなく、憂鬱で手持ち無沙汰な時間が過ぎて行く。


仕事帰りの渋谷さんを待ち構えていようかと、外出の準備もしたが、結局出掛ける事は出来なかった。


話をするなら、やはりまず隆司さんだろう、そう思ったから。


隆司さんの仕事が終わる頃を見計らって、メールを入れてみよう。ようやくそう決心して、自分を落ち着かせようとしていると、メールの着信音が。春希かと思って確認すると


(隆司さん!)


私は慌ててメールを開く。


『全社会議が終わって、今帰社の途中。この週末は、ずっと会議の準備に追われてて、連絡出来なくてごめん。今日は確か、休みだったよな?何もなければ、7時前にはそっちに戻れるから、夕飯、一緒に食べないか?』


そのメールの文面を読んだ私は、カッと頭に血が上り、思わず携帯を投げ捨てそうになった。


(なに白々しいこと言ってるの?)


怒りの次に、今度は悲しみがこみ上げてくる。そうか、この人は、1年半も続けた不倫を、何喰わぬ顔で、私に隠し通した人だった。


だから、私を騙すことなんか簡単だし、なんでもないことなんだよ、あの人にとっては。今回もそのつもりなんだろう。


あの時から、隆司さんと渋谷さんがドライブしていた姿を見てから、ずっと堪えて来た涙が、ついに溢れ出す。お互いに対する信頼と誠実さを失ってしまってる今の私達には、所詮全てが綺麗事であり、絵空事だったんだろう。


もちろん、返信なんか出来るはずもない。私はベッドに潜り込んでいた。