そんなある日のことだった。


その日、仕事帰りに隆司さんと待ち合わせた私は、食事に出掛けた。


ショッピングモールにあるレストランに入って、夕食を楽しみ、食後のコーヒーが運ばれて来た後だった。


「そう言えば、朱美は夏休みとかはないの?」


と聞かれた。私の職場は年中無休だから、夏休みは当然交替制。みんな申請はとっくに終わっていて、既に取得が始まっているけど、正直独り身になって特に予定もなく、それになんと言ってもまだ新入りだから、こちらからは、何も職場に言ってなかった。


「俺もバタバタしてて、夏休みのことなんか、全然頭になかったんだけど、部長クラスはなるべく8月中に取得するようにとか、言われちゃってさ。」


隆司さんの会社も、お盆の休業とかはなく、やっぱり交替制。


「よかったら、休み合わせて、どっか行かないか?」


「それは泊まりでってこと?」


そう尋ねると


「まぁ、そう出来れば嬉しいけど・・・。」 


となんとも歯切れの悪い答えが。


去年までは、家族で、夫婦で夏休みに旅行に行くなんて当たり前。1年の楽しみの1つだった。でも、今年は、ね・・・。


「こうやって、付き合ってるんだから、お泊りでもいいんだろうけど。でもとりあえず今年は・・・。」


同僚のパートさんは、やっぱり主婦やお母さんが多いから、みんな子供の夏休みや帰省に合わせて、休みを取りたがるから、今更「独身」の私が割り込めるかは、かなり疑問だし、なんと言っても私達の立場は、去年までとは変わっちゃったから。


そんなようなことを言った私に


「そうか、まぁそうだよな・・・。」


乗り気でない私に、隆司さんは落胆気味。でも気を取り直したように


「じゃ、俺が休み取った時、1日デートっていうのは、アリだよな。」


と聞いて来るから


「それはもちろん。付き合い始めてから、1日一緒に居たこと、1回もないもんね。」


と答えると、隆司さんの表情がホッとしたように柔らかくなった。