俺達の涙がポタポタと落ちて、床の色を変えていく。


「ごめん。ごめんね……」


求めてばかりでゴメンね。


茉莉自身、苦しかったのに声ばかり求めてゴメンね……。


よく考えれば、声が聴けれないのは茉莉も同じなのに。



濡らした茉莉の頬に手をそえた。


親指で涙を拭き取り、すぐ手を離す。


そして今度は自分の胸の前に持ってきて記憶を頼りに、ぎこちない動きで手を動かした。




〈愛してるよ〉




いつも上手く伝えられないから、とか言って全然使わなかった手話。


今はもう、そんな理由をつけない。


ほら、だってさ俺、今伝えれた。



茉莉が俺に合わせるなんて難しいんだ。


俺が茉莉に合わせればいいんだ。


茉莉にとっての言葉で伝える。


まだまだ勉強が必要みたいだけどな。




茉莉は俺の手を見つめて


〈ありがとう〉


そう伝えてきて笑いながら涙を拭いた。