でも、声はでてなかった。
〈鏡を見て練習したんだ〉
眉を少し下げて笑って茉莉はそう伝えてきたけどその笑顔はどこか寂しそうだった。
〈ゴメンね。声、だそうと思えばだせるんだろうけど……ちゃんと話せないのがコワくて思うようにだせない〉
茉莉は首もとを押さえる。
〈愛してる、って言葉“音”として聴けたことがないから、どんな発音か分からなくて。聞きたくても聞けれなくて〉
茉莉の頬を涙が濡らす。
その涙を見た瞬間、胸が苦しくなった。
……~っ
〈愛してる、って言いたくても言えなくてツラかった。光輝が、愛してる、って言ってくれる度に……〉
俺は下唇を噛んだ。
〈何も言えないことが苦しかった……〉