ゆっくり腕の力を弱めて茉莉を解放する。 顔を見ると茉莉は笑っていた。 手を自分の胸のあたりまで上げ、いつもと同じように手を動かす。 〈別れを言いに来たんじゃないよ?伝えたいことを伝えにきたの〉 伝えたいことって別れじゃなかったんだ。 「伝えたいことって何?」 そう聞いた時だった。 ……え? 自分の目を疑った。 茉莉が口を動かしていたから。 そしてその口の動きは “愛してる”の口の動きだった。