肌が触れてる時にだす声は発音の問題じゃないから、勝手にでるらしいんだけどね。
「ごめんな。用事があるんだ」
手話の意味はだいたい分かってきたけど、まだちゃんと手話で伝えたいことを表現出来ない俺は、ゆっくり唇を動かして話す。
すると茉莉は俺の唇の動きを読み取って意味を理解してくれる。
動きを読み取った茉莉は、床に視線を落として小さいため息をついた。
そんな姿を見ると胸の奥がギュッと握りしめられたように、喉に何か詰め込められたみたいに、苦しくなる。
そんな気持ちをごまかすように、俺はそっと茉莉のあまり柔らかくない髪に指を絡ませて、目線を合わせた。