……~っ
しばらく玄関から足を動かすことが出来なかった。
下唇を噛んで床を見ていた。
だってさ。
家からなんの音も聴こえない。
――声が欲しい。
トントン……
左肩をつつかれる感覚があった。
左肩の方を見ると、茉莉がパチパチと何回もまばたきをし、心配そうな顔をして
〈おじゃまします〉
と手を動かした。
そして、俺の腹の前で両手の組んだ。
「茉莉?」
彼女の腕は、俺の腰のあたりを強く締めつける。
まるで俺に「大丈夫だよ」って言ってるみたいに。
彼女の柔らかい肌が暖かい。
俺は茉莉の腕を体から離して、彼女の唇に自分の唇を押し付けた。
――温もりが欲しい。