えっ?確かに2段目に入っていた。
カラフルなルービックキューブが入っていたのを、私は覚えている。
それなのに、どうして__?
愕然としている悠馬が、他の引き出しをあさる。
1段目にも1番下にも、ルービックキューブは見当たらない。
考えられるのは、部員が持っていってしまったのか?
それならあり得るけど__?
「あーあ」
めんどくさそうに立ち上がった賢太が、倒されて制服についた埃を払う。
「さっき僕に言ったよね?お前は馬鹿かって」
「なんだぁ?」
「それ、そっくりそのまま君に返すよ」
そう言って、賢太はにんまりと微笑んだ。
その瞬間、私は悟った。
こいつだ。
こいつが、ルービックキューブを盗んだ。
そういえば今朝、慌てたようにこの部屋から出てきたじゃないか。
あらかじめ物を仕込むのはルール違反になる。けど、物を取り上げることは不正じゃない。賢太じゃなくても、学校内の物は人から人へ移動するものだし。
だから賢太が、どこかに移し替えたんだ。
悠馬は【る】がくることを予測していた。賢太は、ルービックキューブを選ぶつもりだった悠馬の考えを見透かして、そのもの自体を隠した。
裏の裏をかいたんだ。



