そして、賢太は確信している。


【る】から始まるものを、悠馬が探し当てることがないと。


「あと1分しかない」


冷静に残り時間を伝える新田くんの声も、わずかに震えている気がした。


残り1分。


これだけ探して見つからないんだ。


もう、見つけることはできない__。


「くっ、く」


肩を揺らして笑い始めた賢太。


手当たり次第に物を投げつけている悠馬。


2人の表情は、対照的だった。


「本当にごめんよ」


心にもないことを謝る賢太が、飛んできた駒を手で払う。


それは、チェスの駒だ。


将棋といい囲碁といい、この部屋は一体?


「ここ、オタク部じゃない?」


「オタク部?」


「そう。ゲーム部ってやつ。コミュ害が集まって、夜な夜なゲームしてるって話」


響子が顔をしかめて言った。


だから、色んなボードゲームがあるのか。


そのボードも、悠馬が膝で叩き割っているけど__。


『残り30秒』


アナウンスが、無情にも流れた。


もうだめだ。


「僕をいじめた罰だ」


賢太がはっきりと宣告する。


諦めたのか、ぱたりと暴れるのをやめた悠馬が、ゆっくりと振り返った。


その手には、あるボードゲームが。


【人生ゲーム】と書かれている。


そして中から取り出して、くるくると回したんだ。